
9月に入り、朝晩は少しずつ秋の気配を感じるようになりましたが、この季節の変わり目は、言葉を話せない動物たちにとって思いのほか過酷な時期でもあります。
飼い主の皆様が日々の暮らしの中で気づき、守ってあげられる秋口の健康ケアについて、獣医学的な視点から詳しくお伝えします。
秋の植物アレルギー:皮膚とお耳のサインを見逃さないで
涼しくなるとお散歩の時間が長くなり、草むらや河川敷を歩く機会も増えると思います。
しかし、秋はブタクサやヨモギ、カナムグラといった雑草の花粉が多く飛散する季節です。
人ではくしゃみや鼻水といった症状が一般的ですが、犬や猫の環境アレルギーは「皮膚」や「耳」に症状が出やすいという医学的な特徴があります。
もし、愛犬・愛猫がしきりに顔を擦り付けていたり、手足を舐め壊していたり、耳を痒がって赤みが出ている場合は注意が必要です。
お散歩の後は、濡れタオルや専用シートで被毛や肉球の間についた花粉を優しく拭き取ってあげること、そして外耳炎を繰り返す前に早めにお耳のチェックを受けることをお勧めします。
秋の味覚の落とし穴:美味しいものに潜む危険
食欲の秋、美味しいものを少しだけお裾分けしてあげたいと思うお気持ちはとてもよく分かります。
しかし、動物たちの体は人間とは大きく異なります。
特に絶対に避けていただきたいのが「ブドウ・マスカット類」です。
これらは犬や猫において急性腎障害(AKI)を引き起こすことが分かっており、一粒でも致死的になるケースがある非常に危険な食べ物です。
また、サツマイモや栗などは中毒物質こそ含まれていませんが、糖質と食物繊維が非常に豊富です。
喜ぶからと与えすぎると、消化不良による重度の胃腸炎や、急激な糖質・脂質の摂取が引き金となる急性膵炎を発症するリスクが高まります。
秋の雨上がりに生える野生のキノコも、散歩中の誤食による神経症状や肝障害の報告があるため、地面のにおいを嗅ぐのが好きな子は特に気をつけてあげてください。
「涼しくなったから」の油断が招く秋の熱中症
朝晩の空気がひんやりしてくると、つい「もう熱中症の心配はない」と安心しがちです。
しかし、9月は日中の気温が急上昇したり、台風の影響で湿度が高く蒸し暑い日が少なくありません。
飼い主様が不在にする日中の室内や、お出かけ時の車内などで、この「油断」による熱中症が毎年発生しています。
動物たちは人間よりも体高が低く、地面やアスファルトからの放射熱を直接受けやすいため、飼い主様の肌感覚ではなく、室内の「温湿度計」の客観的な数値を基準にエアコンを活用してください。
台風シーズン:気圧の乱高下と大雨への心のケア
9月は台風が多く、急激な気圧の低下や激しい雷雨が続きます。
こうした天候の急変は、動物たちの自律神経のバランスを崩し、「気象病」として体調不良を引き起こすことがあります。
持病の関節炎が痛んだり、てんかん発作が誘発されやすくなるほか、ストレスから消化器症状(嘔吐・下痢)や猫の特発性膀胱炎を起こす子も増える時期です。
雷や大雨の音にパニックになってしまう子のために、窓から離れた部屋の静かな場所に、クレートなどで光や音を遮断できる「安心できる隠れ家」を作ってあげてください。
また、外でしか排泄できない子は、悪天候による長時間の我慢が膀胱炎に直結するため、室内で排泄できる環境づくりも今のうちから少しずつ進めておくと安心です。
この時期は夏の疲れがどっと出やすいタイミングでもあります。
いつもより元気がない、少し様子がおかしいと感じた時は、どうぞ迷わずに主治医までご相談ください。




