ここ数年食欲が落ちてきて痩せてきた。

半年ぐらいあまり食べていない。

一週間ぐらい全く食べないし、昨日から元気がない(意識がない)。

 

こういう初診症例が、診療終了時間ギリギリで来るという経験は、それなりの経験を積まれた獣医師なら有るのではないでしょうか?

そして、こう思うんです。

 

「数年前に来てくれよ!!」

 

そして自体の深刻さと現状の危うさを伝えて検査や治療に一刻も早く移りたい時に衝撃の発言が飛び出します・・・

 

「検査も治療もしたくない、でも元気にしろ」

 

獣医師は魔法使いではありません。

極端に書きましたが、こういうことは全国至るところで今日も繰り広げられて・・・いないことを心から願います。

そして今日のブログの題材は、

 

「早期発見、早期治療」

 

です。

もう、読んで字の如し。

病気を早い時期に発見して、早い段階で治療をしていく。

そうすることで病気の重症化を防いでペットの健康を守っていくという考え方です。

この考え方を支える大きな柱は、

 

1.定期健康診断

 

2.予防医療

 

3.異常発見、早期動物病院来院

 

この3つかなと思います。

ペットの寿命は人よりも短いです。

ペット保険のアニコムさんが調べてくれていますが、ワンちゃんで14歳ぐらい

ネコちゃんも14歳ぐらい

というデータが出ています。

日本人の平均寿命が男性81.09年、女性87.26年厚生労働省が発表しています。

ワンちゃんやネコちゃんは最初の一年で一気に成長します。

一般的なペットの年齢を人の年齢の比較は、ペットの年齢を(x)、人の年齢を(y)とすると・・・

y=15+(x-1)5

で導き出されると言われております。

簡単に言えば、ペットの一年は人間の五年に相当する。

ということです。

 

当院では一年に二回、春と秋の健康診断をおすすめしています。

一年に二回全身を調べるのって、ちょっと過剰医療で金儲け何じゃないの? なんて考える飼い主様もいらっしゃるかもしれません。わかります。

でも、一年に二回の健康診断は人間に例えれば、二年半ごとに人間ドックを受けるような感じになります。

そう考えると、ああ、まぁそんな感じかな? と思っていただけると思います。

とくにワンちゃんやネコちゃんは、最初の一年にぐっと成長して、成人期を長く維持して、ギュッと詰まった老齢期を過ごす生き方をします。

高齢と考えられる8~10歳を超えた動物さんにはこのペースの健康診断は決して過剰ではないと考えています。

 

基本的には血液検査、超音波検査、レントゲン検査が健康診断の項目になります。

スクリーニング検査(全体を見渡して異常を見つける検査)としての血液検査・レントゲン検査、各種重要臓器の評価に超音波を用いる形です。

 

検査結果の読み方も大事になります。

重要なことは時系列でデータを捉えるということです。

検査結果に全体の平均値的な正常値は乗っていますが、その個体の本当の健康な値というのは実はわからないのです。

健康な状態の血液検査などを積み重ねることで初めてその個体の正常な値を知ることが出来ます。

そして、その数値の変化を見れば、正常範囲内にあっても上昇傾向に有る、などの普通なら異常として捉えることのできない異常となりつつ有る変化に気がつくことが出来ます。

発症して臨床症状を出す前段階、しかも血液の数値としては正常範囲内の変化に気がつくことが出来るのは、定期健康診断だけです。

 

まだ症状もない病気にアプローチするのは、またまた金儲けじゃないの? と思われる飼い主様もいらっしゃると思います。わかります。

でも・・・動物は話せないのです・・・

もしかしたら

「最近少しだるい気もするけど、ほんとに気の所為程度だから元気いっぱいです」

「以前より老いを感じてきましたが、ま、こんなもんだろと元気に暮らしています」

こんな感じかもしれません。これは完全な妄想ですけどね。

人間だったらどうしますかね?

私なら、とりあえず酒を減らそう。明日から! と言ってビールを開けますね。

冗談です。

少し自分の健康を気遣ってサプリメントとか食事とかを気をつけますよね?きっと。

動物にもそれくらいのレベルからアプローチできないかな? というのが早期発見早期治療のコンセプトです。

発症、病気であることが外からわかるような症状を出す前からケアを開始できる。

これって素晴らしいですよね。

そして、極僅かな症状でもすぐに動物病院へ行ってもらって、早い段階に軽い治療で元気にしていく。

そんな社会になっていけば素晴らしいなと思っています。

超重症例がたくさん病院に入院して、獣医師やスタッフが寝る間を惜しんで働き続ける・・・

その重症例の中にはもっと早くアプローチしていればこんな状況にならないですんだ動物もたくさんいます。

冒頭の冗談みたいな症例を少しでも減らすためにも、私はこの

 

早期発見、早期治療

 

これが当たり前の社会を作っていきたいです。

もちろん、突発的な事故や病気・怪我は必ず起こります。

重症例で疲弊した獣医師が必死にそういった偶発的なアクシデントに対応するよりも、余力有る獣医師が全力でそういった事象に当たれるような社会を目指していきます!

 

なんか立候補するのか? みたいなブログになりましたが、どんな小さな一歩でも、こういった情報発信で進んでいくと信じてこれからも頑張っていきます!

それでは、また!