FIP、猫伝染性腹膜炎。

コロナウイルスが突然変異をして、

猫に致命的な症状を起こす恐ろしい病気。

ウエットタイプ、ドライタイプ、神経タイプと症状によって分けられ、

典型的なのはウエットタイプ。

腹水でお腹がパンパンになって元気がなくなっていく。

過去においてはなかなか有効な治療方法が見つからず、

発症してしまうと治すことが出来ない病気と呼ばれていました。

 

現在は、有効な薬が発見され、治せる可能性が高い病気になってくれました。

しかし、

薬がなかなか問題が多く、

ペーパー、論文の手前の報告的な物だと思っていただければ良いのですが、

査読されて世に出た場合はある程度の信頼性の有るデータだと思ってください。

そういったもので、

GS-441524 という物質がFIPへの治療効果を認められました。

このままその物質が薬にー、ってなってくれればよかったのですが、問題が起きます。

 

MUT○AN問題です。

この薬は、GS-441524の特許を侵害して勝手に作られた、

いわば海賊版です。

さらに、購入するためには、

現在色々と問題を抱えている中国のブラックマーケット的なところから

手に入れなければいけません。

海賊版は論外ですが、個人輸入の薬によるトラブルは

なかなか闇が深く、

買った商品の内容が全く異なったり、

薬剤の中に入っていないはずの成分が入っていたり、

国内では禁止されている成分が入っていたり、

いろいろな問題を起こしているそうです。

 

それ以前の問題として、

薬剤の特許を侵害している物を利用することは、

今後の未来に対して、

新たな薬物の開発などを阻害します。

倫理的にも、許される問題ではありません。

わかりやすく言えば、

漫画が読めるからって、漫画村で読んでいいのか? って感じです。

そしてこのムテ○アン

とんでもなく高額です。

治療全体で100万近い費用がかかることもザラです。

 

しかし、

FIPは命に関わる問題です。

多くの獣医師は葛藤します。

なんとか特許侵害や闇市以外の方法を模索し、

本当のGSー441524を試薬として入手し、

複雑な処置をして薬としてもちいるような努力をされたり、

今回のコロナに関連して多くの薬剤が登場し、

その中でもいくつかの薬がFIPにも効果が出そうということで

世界でもいろいろなデータが示されました。

ただ、相変わらず投薬費用の問題、そして、国内で使用するハードルは高いままでした。

クラウドファンディングなどで多くのFIPに関わるものが存在しているところからも、

皆様の苦労が垣間見えます。

 

そして、

ようやく、

特許を侵害するような薬ではなく。

非常な高額でもなく、

きちんとしたペーパーからも効果が期待できそうな薬を

比較的簡単な方法で手に入れられるようになりそうです。

治療費は、ムテ○アンの多分20~100分の1?

現実的な内服薬の範囲で治療をすることが可能になりそうなのです。

残念ながらまだ日本では動物に対しての使用を認可されたものではありませんが、

獣医師には一定の裁量が認められています。

自己の責任において、日本国内において人体用に承認を得られた薬を動物に用いることは、

慎重な判断は求められますが、認められています。

いわゆるジェネリック薬を用いてできる限り費用を抑えた治療を模索できる選択肢が産まれました。

 

*海外から個人輸入した薬剤を、自分以外の人に使ったり、販売することは

法律に違反する可能性があります。

絶対にやめましょう

個人輸入した薬を動物に使用して何か問題になった場合は

もしかしたら動愛法などに低接する可能性もあります。

動物の安全のためにも、自己判断による薬の使用は控えていただいたほうが良いと思います。

 

閑話休題

なので、

本来はCOVID-19用に作られた、

きちんと認可され、

偽薬ではなくブラックマーケットではない場所から薬を手に入れる事が

出来るようになり、

いままで苦しい思いをして治療に踏み切れなかった獣医師も、

ようやく後ろめたい事なくFIP治療をできる体制が整いつつあります。

もちろん、

どのような薬で、

どのようなことが考えられ、

そもそもFIPであることをきちんと診断し、

それらに飼い主様がきちんとした理解を得られた場合にのみ、

丁寧に用いるという大原則は忘れてはいけません。

 

どの病院でも、

受け入れやすい金額で

FIPの治療ができる。

全獣医師が望んでいた世界が、

今、開こうとしています。

 

もちろん、状態によっては、

適切な治療をしても、結果が伴わないことはあります。

しかし、今まではその適切な治療にアクセスできなかったので、

それが解消されそうであるということは、

獣医師にとっても、当然動物、そして飼い主様にとっても素晴らしい朗報だと思います。

 

私なんかは、いい友人からすぐに情報をいただけましたが、

もっと海外のデータに直接毎日触れたりして

勉強をし続けている先生なんかにとっては、

こいつ、おせーな、はぁ・・・

とため息をつかれてしまうかもしれません。

これから頑張ってもっと勉強したいと思います。

 

現在、その薬剤を手に入れるべく手続きを行っており、

それが手に入れば、FIP治療のお手伝いができるようになります。

頑張りますね!!

 

当院が特別なわけではなく、

今後はたくさんの病院で利用可能になることが予想されます。

ぜひかかりつけの動物病院にもご相談ください。

 

ではまた!!