下痢、消化器疾患の一つで臨床の獣医師なら最も診察することになる病気の一つ。

日常的に発生しており、一般的な検査治療で、特に細菌性下痢と呼ばれる、わかりやすく説明すると腸内環境の悪化によって引き起こされる病態。

そう、よくあることで、そんなに治療に苦労しない、しかも、初期に治療を始めればそこまで深刻な状態にはなりにくい病気。

 

しかし、

 

一般的な治療に反応せず、長期に渡って便の状態が悪く、全身状態も悪化してしまう。

そんな下痢も存在します。

 

炎症性腸症と呼ばれる一連の病気や腫瘍性の病気は非常に診断が難しいことがあります。

基本的に下痢を診察する場合は、便検査と問診、そして全身の診察という流れになります。

寄生虫などであれば便検査に引っかかるでしょうし、直近に食べ慣れないものを食べたり食事の変更が有れば食事指導などをするでしょう。

特記事項がなければまずは細菌性下痢であろうと考えて治療から開始することも多いです。

雨の日や台風、花火の日であればストレスなども考慮します。

プロバイオティクスや整腸剤、場合によって駆虫薬や静菌剤、重度であれば抗菌剤などを組み合わせて治療して、治療反応を見ていきます。

食事療法を組み合わせる場合も多いですね。

食物有害反応や食物アレルギーも初期の段階で疑って治療をしたりします。

この最初の治療で・・・9割くらいの子は便の状態が改善すると思います。

時間をかけて薬をやめていく子もいたりしますが、まぁそんなに苦労はしないことが多いです。

 

と、そんな中に全く治療に反応しない下痢が現れます。

こうなると、普通の下痢から、特殊な下痢扱いとなって、一気に全身の精査が必要になります。

下痢と嘔吐が合わさると全身的な検査をすることは少なくないですが、元気で食欲もある下痢で全身の検査というとびっくりされるかも知れませんが、必要なことなんです。

最終的には麻酔をかけて外科手術か内視鏡で腸の生検まで行くこともあります。

私は初期から超音波は使います。ただ、腸全体を舐めるようにみるまではやりません。

しかし、難治性の下痢のときは出来る限り丁寧に全体を見ます。

お預かりしてかなりしっかり見ます。

たかが下痢でも、そこまでしっかりと診なければいけない病気も有ることを知ってください。

たかが下痢なんて思ってませんけどね、結構怖いんですよね、下痢程度治せない獣医なんて・・・って思われそうじゃないですか。

だから下痢って丁寧にやったほうが良いんですよ。

反応が悪ければきちんと丁寧に対応しないと、初動が遅れちゃうんです。

なので、できれば再診とかは守ってください。

「治ったから様子見たらゆるくなってきたけど、別にいいかなぁ。で、ほっといたら気がついたらガリガリでなんかお腹だけ張ってきた」

こんなことも、稀にあります。

獣医師も飼い主様も丁寧にやっていきましょう。

 

「ネットで買った腸にいいご飯を上げていたけど、全然良くならない」

これも、増えてきてますが、処方食だとしたら、処方食はそんな甘いものじゃないんです。

きちんと動物の病気を診断して、こういう反応が出るだろうと予想して、その反応通りになっているかを把握して、食事を評価して、必要に応じて変化させていく。

それらのプロセス全てを含めて処方食を『処方』しているんです。

ネットやホームセンターで安易にただ金儲けのためにばらまかれた処方食をただ食べるのでは意味がありません。

貴方の大切な家族の食事は今一度向き合って考えてみましょう。

 

ちょっと脇道にそれましたね。

 

そんな感じで、除外診断を行っていくと難病にぶち当たります。

こうなると治療レベルが完全に変わります。

免疫抑制剤を使ったり、ステロイドを使ったり、腫瘍であれば抗がん剤や外科手術と言った具合になります。

生涯に渡るケアが必要になることも多いので、可能性の一つとして考えておかなければいけません。

 

病気は言ってしまえば何でもそうなんですが、除外を積み上げて病気を見つける作業になります。

まずは可能性の高い病気から除外していって、だんだん珍しい病気の除外になって、ようやく病気に辿り着くことも少なくありません。

珍しい病気の検査は高額になることもありますが、珍しいから高くなってしまうんですよね・・・

でも、きちんと病気を見つけて治療をして、少しでも動物のQOLを上げられるように獣医師も飼い主さんも頑張って行きましょう!

 

ではまた!