臨床開業獣医師、いわゆる街の動物のお医者さん、特にうちのような小規模な病院にとって

血液の問題は非常に頭を悩ませます。

具体的に言えば、輸血問題です。

輸血は貧血状態の動物の状態を改善させる、最も効果的な方法です。

元気な子の血液を、病気の子にうつしてあげることで、足りない血液を補ってあげる。

輸血、という治療方法です。

 

元気な子の血液を確保する。

コレが、とても大変なんです。

病院で飼育していたり、家で飼っている自分のペットの血液を使うことが多いのですが・・・

みんな、歳をとっていくんですよね・・・

輸血のドナー、血をあげる側は、若くて健康な生体でなければいけません。

一般的には2~5歳が望ましいと言われています。

つまり、その3年間しか他人に血をあげられないのです。

動物の寿命は現在だいたい平均15歳。

普通、そんなにばんばんと動物を飼育は出来ませんから、10年かそれくらい、輸血できる子がいない状態が続いてしまうことになります。

 

そうなると、輸血が必要なペットさんがいた場合は、輸血できる子を探してきてください。

となるか、輸血が出来る仕組みを構築している大きな病院に行っていただく事になってしまいます。

 

人間みたいな仕組みを作るために日夜努力をなさっている病院さんや獣医さんもいらっしゃいます。

いつの日か、そういった仕組みができて、より当たり前に輸血という選択肢が取れる状態になってくれることを目指していきたいですね。

 

ドナー問題、以外にも問題はあります。

他者の血液を入れるという行為は、ハイリスクハイリターンな治療法です。

確かに足りていなかった血液が供給され状態が上がりますが、免疫反応などが起きて、輸血した血液が、あっという間にだめになってしまったり、有害な反応が起きてしまうことがあります。

輸血反応と呼ばれる症状です。

事前に交差試験と呼ばれるテストを行っても、予測の出来ない困った症状です。

 

さらに、輸血して状態が上がっても、自分自身で血液を作ることが出来なければ、血液の寿命が終われば、また貧血になってしまいます。

その時に、再び輸血して治療を継続していけるのか? という問題も生まれます。

例えば腎不全の末期に起こる貧血などは、根治的な治療は難しいことが現実です。

輸血をし続けて維持していく事が、血液にも限りが存在しているために難しい場合もあります。

また、急性出血などで本当に今血液が必要な場合に、不足してしまう状態を作ってしまう・・・

難しい問題です。

輸血には多額の費用もかかりますし、監視や入院も必要になる大変な治療です。

それでも、なんとか動物の命をつなごうと、臨床の場では獣医師やスタッフ頑張っています。

 

もし、貴方のペットが若く健康で、身体が大きいのなら、かかりつけの獣医さんが輸血の協力を求めてきたら、ぜひ協力してあげてくださると嬉しいです。

 

ではまた!