誰も悪くなく、皆が動物のために動いていたのに、不幸な結果になってしまった。
飼い主様も非常にご理解があり、きっと治療に当たられた獣医師も立派な方だったのだろう。
予想だにしない突然の悲劇というものは存在する。
非常に稀であっても、愛する自分の家族に降りかかれば、1万頭に1頭しか起きないことでも1/1になる。
ありとあらゆる可能性を潰してから治療に入れば、それだけそういったことを減らせるのかもしれません。
しかし、現実的ではありません。
どうしても、可能性の高いところを潰し、薄いところの検査は行えない事が多い、本人への負担や、費用的な負担、そして時間的な負担など多くの要素が絡みあります。
基本的に麻酔や鎮静処置をする時は、視診、聴診、触診、全身のレントゲン、血液検査、超音波によって全身状態を把握して行います。
血液検査もスクリーニング的な全体を把握する項目に絞ることが多いです。
細かな内分泌や自己免疫系の検査など、特殊な検査を行わない事が多いです。
重症例だと一般スクリーニングでも拾えることはありますが、隠れてしまうことも多いです。
様々な要件を総括して考えて、できる限りリスクを下げて安全に行えるように方法を定めていきます。
例えば避妊手術や去勢手術は、一般的な動物病院でも日常的に行われます。
だからといって、簡単な手術ではありません。
強いて言うなら、最も手技的に訓練されており、馴れている手術、までなら言えます。
しかし、どんな手術手技でも麻酔管理がうまく行かなければ意味をなしません。
麻酔というものはきちんとした術前検査全身検査を行って、ちゃんとモニタリングを行うことで、高齢であっても行えると私は考えています。
しかし、どうしても起こる麻酔事故というものは存在します。
アレルギーのようなこともありますし・・・
その兆候に素早く気がついて適切な処置を行って、なんとか麻酔事故をへらす努力を獣医師は行っています。
うーん、言い訳を書きたかった訳ではないのですが、そんな内容になってしまって申し訳ないです。
元気な子を元気に返すことが当たり前と考えられている避妊手術や去勢手術でも、数多く行われているから馴れて楽に行っているわけではないんですよ、ってことを言いたかったのです。
……言い訳に聞こえちゃいますかね?
最近獣医師領域でも麻酔科医の先生が活躍しています。
動物医療の意識がますます高まっているからだと思います。
専門性も高まっていますよね、細分化すると、本当に一つ一つ、そこが見えない深さがあります。
その中で我々一次診療施設の、所謂、動物のお医者さんの仕事は、
適切に病気を診断し、診断がつかなければ診断をつけられる先生にきちんとバトンを受け渡し。
自分の範囲内で治療できることは全力を尽くし、自分で出来ないことはきちんと出来ないことを伝えて出来る場所へと紹介する。
これからの獣医師はそういうスタイルが大事だと思います。
そのためには、出来る限り広い知識を持って、わからない、ことを減らす必要があります。
「やらない」ことと「出来ない」ことは天と地ほどの差があります。
都市型の病院の話になってしまって居る気もします。自覚はあります。
スーパーマンな先生が何でもやれる時代から、それぞれの専門性を伸ばして、分業する時代になっていくんじゃないかなと思っています。
自分は皮膚が好きなので、そこは伸ばしていきたいですが、あくまでも動物のお医者さん、街の獣医さんを目指しています。
適切な症例を適切な病院にきちんと紹介するためにも、これからも幅広く学び続けたいと思います。
ではまた!