困難だったり、苦労したりする・・・っていう意味ではありません。

今回は骨折についてお話します。

 

人間もそうですが、骨折って、かなり珍しい病気になってきています。

時代も変化して、外を自由に動物が歩き回ったりもしていませんし、

リスクの有る犬種では、購入時に注意されることも多くなっていますし、

飼い主様の飼育知識も向上しています。

その結果、偶発的な骨折の発生回数が低下しています。

もちろん、飼育環境にもよります。

いまだに交通事故でしょっちゅう動物が犠牲になる場所も有るようですが、

当院では、もう交通事故で担ぎ込まれることは殆どありません。

うちのような都市部の病院だと、メインの骨折の原因は高所からの落下です。

小型犬の前肢は非常に細く、簡単に折れてしまいます。

そして、結構治療が難しかったりします。

太い木が折れたらしっかりと固定できますが、

細い枝が折れたら、きちんと固定するのが難しいといえばイメージしやすいかもしれません。

整形外科疾患は、職人芸です。

そして、道具が非常に重要です。

現在の動物医療では専門化がすすでおり、整形外科を専門に診療をされている病院ができています。

年に数例手術を行うよりも、そういった専門医に症例を集めて、専門的な道具を用いて、どんどんスキルを伸ばしてもらう。

そういった考え方が、一般化しています。

当院のある千葉県でも、整形外科を専門に診療している動物病院ができました。

当院は、基本的に骨折や、複雑な整形外科疾患は紹介しています。

 

これからは、こういった事が増えていくんだろうなぁと思います。

一次診療施設ではきちんと病気を把握する能力に特化して、

各病気を適切な専門病院に紹介できるかどうか、そういった能力が必要になると思います。

まだ私は少し古い獣医師なので、結構なんでも診療を行いますが、あと10年もしたら、

専門医以外の治療が問題になるような社会になってしまうのかもしれないな・・・と、不安に思っています。

一見すると、専門医が診てくれるのは良いことかもしれません。

しかし、場所の問題、時間の問題、費用の問題が必ず出てくると思います。

専門性の高い診療は限られた場所にしか無いでしょうし、

一箇所に集中しますし、

高度な設備と人員を揃えるコストがかかります。

我々のような一次診療、街の動物のお医者さんは、普通の人間の病院と異なり、なんでも屋的な場所です。

眼科も診ます。

歯科も診ます。

皮膚も、胃腸も、肝臓も腎臓、心臓、膀胱、骨、関節、神経、腫瘍、行動、精神などなど、

それら全てを診察しています。

総合診療医、かっこいい言葉で言えば、我々はジェネラリストです。

専門医、スペシャリストとジェネラリストがどういった関係性で動物医療を支えていくのか、

それを決めるのは、有る意味飼い主様たちの選択や意見です。

専門性を求めることのメリットデメリットをしっかりと理解して、

バランスの良い選択をすることが、私自身では一番いいと思っています。

極端に偏ると、みんなが幸せにならない未来が見える気がします。

お互いが、尊敬しあって支え合う、そんな未来が来ることを祈っております!

骨が折れる作業ですが、少しでもいい情報を巻き散らかすことで

飼い主様、獣医師、動物、スタッフ、みんなが幸せになる未来を作る手助けをこれからも続けていきたいと思っています!

 

ではまた!