まもなく、関東でも梅雨が開けます。

そして、夏が来ます。

もうわかりますね。

熱中症に注意してくださいね。

ゆで卵は生卵には戻せません

 

今回は、不幸にも熱中症になってしまった場合、どの様に治療して、どのような転機をたどるのかをお話します。

熱中症のきっかけは様々です。

最も典型的なのは、やはり日中の散歩です。

散歩から帰ってきてからハッハッハと呼吸が早いのが変わらずにどうも調子がおかしい。

そんな感じが多いです。

出かけていて帰ってきたら様子がおかしい。

ほんの少し車に待たせていて戻ってきたら様子がおかしい・・・

下痢で来院して、妙に身体が熱い、もしくは経過を伺っている時に熱中症の可能性が上がってくる、など・・・

熱中症への認識が低いこともあります。

 

高体温の熱中症患者への初期治療は、まずは体温を下げること、

この時氷水のような冷水で身体を冷やそうとする方が居ますが、

極端な低温にさらされると、生物の体は防護反応で体温を下げない仕組みが発動してしまいます。

水道水ぐらいの温度で構いません。

タンパク質が変質してしまう42度くらいの高温から下げればいいので、

水道水で十分です。

とにかく流水をかけまくる。

あまりに高温の場合は直腸内に冷水を入れたりもしますが、

ガブガブと水を飲ませたり、直腸に水を入れると、後に下痢で苦しみます・・・

 

体温が39度くらいまで低下したら冷却を止めましょう。

体温を下げすぎると、先程と同じ様に防護反応が起きて、震え、シバリングなどが発生して体温をあげようとしてしまいます。

体温の下げすぎに注意です。

 

高体温でぼーっとしていた子は、体温が下がると意識が回復してきます。

元気になったように見えます。

ここで安心される方が居ますが・・・

ここからが始まりです。

 

熱によってダメージを受けた臓器を把握するために一度血液や超音波、レントゲン等で状況を把握します。

肺水腫など、深刻な問題が有ればどんどん治療していきます。

この時、正常な数値であっても安心できません。

熱によってダメージを受けた臓器の影響が出てくるのは遅れて出る可能性があるからです。

可能な限り臓器への負担、ダメージを軽減するために、通常体温を維持しつつ点滴などによって循環を維持させます。

 

そして、何度も言っている、ゆで卵は生卵に戻せない。という事実であり地獄はここから始まります。

すでにダメージを受けてしまった臓器は、蛋白が熱によって変質して、壊死します。

そして、そのダメージが表面化してくると、様々な病態を起こします。

肝機能不全、腎不全、腸炎、膵炎、肺炎、心不全……

熱によるタンパク変性が原因のこれらの症状は、薬によって回復はしません。

支持療法を行って、自力で回復するまで耐えさせることが出来るのか? という治療しかありません。

 

つまり、

助かるダメージまでで止められていれば、助かります。

助けられないダメージを受けていたら、助かりません。

 

これが、熱中症を起こさせないように、

口うるさく何度も何度も繰り返しお話する最大の理由です。

 

助けられないからです。

 

獣医師も神様ではありませんから、

もちろん助けられないこともたくさんあります。

しかし、

これほど身近に存在して、

飼い方で回避できる致命的な病気は、

啓蒙で防ぎたいんです。

飼い主様に知ってもらって、ペットを熱中症にさせることを0にしたいんです。

ペットを熱中症にさせないことは、

飼い主様の努力で実現可能なんです。

 

日本の気候は変わりました。

昔は大丈夫だったは通用しません。

ペットも年を取ります。

若い頃は大丈夫だったは通用しません。

 

空調は必ず涼しいと感じるレベルで使用してください。

日本は熱帯気候になったと思いましょう。

日中、日の当たる状態で散歩はやめましょう。

日が沈んでも、地面を触ってアスファルトが熱くないことを確かめてから散歩をしましょう。

極端に興奮をさせて、本人の限界を越させないでください。

途中でも休憩して、水分を適量とって、熱中症を常に頭に置いておいてください。

 

余談ですが、たっぷりとお水を飲んで散歩に行くと、それはそれで、胃捻転など超危険な病気を引き起こすので、

可能であれば食事や飲水と散歩は時間を開けてあげてくださいね。

 

恐ろしい熱中症は、100%飼い主様が防ぐことができます。

熱帯となった日本。

今一度意識を塗り替えて熱中症0を目指しましょう!

 

ではまた!