やっぱり、言葉の通じない動物の診療って、難しいんですよね。

動物は、基本的に病気を隠します。

自然界に生きていて、病気であることを周囲に知られることは命に関わります。

たとえ深刻な状態であっても、ぎりぎりまで普通に振る舞い、周りの敵に自分が弱っていることを知られないようにする。

そういった野生の本能が根底にあるからだと言われています。

 

つまり、基本的に病気であるような行動が出てしまっていると、重症である可能性がある。

ということになります。

外見から病気が存在していることに気が付きやすい外傷や皮膚疾患であっても、

内部ではどういうことが起きているのかは外を見ているだけだと判断が難しいです。

 

軽症に見えて重症である可能性は常にあります。

その判断を広くするためにはスクリーニング検査というものが必要になります。

幅広く問題点を掬う検査、それがスクリーニング検査です。

血液検査、レントゲンは、非常に優れたスクリーニング検査と言えます。

幅広く身体の異常を把握して、その部位に対するさらに細かい検査を選んでいく。

王道の検査の流れになります。

もちろん、大前提として、視診、聴診、触診などの一般的な診療はその手前でしっかりと行っています。

動物病院の獣医師という職業は、驚くほど多岐にわたる診療科を一人でこなすことが多いので、

様々な方法で病気を捉える複雑なことを、実はこっそりやっているのです。

 

ある程度の絞り込みを終えて、重症度と合わせて様々な選択肢の中からびしっと答えが出せればいいですが、

全てのペットを取り巻く環境は異なります。

病気をピンポイントで抑えるような特殊な検査は高額な場合も多いです。

出来る限りびょうきを絞り込んだ上で、金銭的な問題で検査が行えない事も少なくありません。

何でもかんでも検査していたら、ぼったくりと呼ばれてしまいます。

だからといって、病気を見落とせばヤブ医者と呼ばれてしまいます。

本当に難しいんですよね。

そこらへんをきちんとバランスを取ることは、

全症例でやり方を変えるぐらいに繊細な機微な問題です。

一度薬を出して、その反応を見て次の可能性を考えたり、

これはきちんと確定しないとすぐに危険になる可能性がある。

もう、無限とも言える可能性、選択肢から、最適な答えを導かなければいけません。

治療方法だって、入院させて治療できるのか、連日の通院で注射で治療するのか、内服で治療して良いのか、外用薬でやるのか、

動物の性格、家庭環境、飼い主様の協力具合、経済的な問題、命というものに対する哲学的な考え方、などなど、

一つの症例と向き合い治療するためには、動物や病気を見ているだけではいけません。

すべてのことに興味を持って、多くの選択肢の中から、動物、飼い主、獣医師、病気に関わる全ての人が継続可能で、治療効果を最大限に引き出せる選択を選んでいます。

 

我々は、診療の時に、実はこんなに色んなことを考えています。

安易に物事を勧めているのではありません。

だから、飼い主様にもぜひ、医療従事者に興味を持って欲しいです。

治療内容に興味を持って欲しいです。

私は、飼い主様が過剰な知識を持とうとするのは無駄だと思ってます。

今回の新型コロナウイルスの一連の報道や、情報の氾濫や、世論の曖昧さを見て、

専門家でもそれを生きる道として全てを捧げていても理解に至らない世界のことを、

一般人である飼い主様がある程度以上の知識を得ることは不可能だと確信しています。

そして、不必要、むしろ、じゃまになると考えています。

大事なのは、表層の深い理解だと思っています。

わかりやすく簡便な言葉で、ちゃーんと理解する。

わかりやすく、簡単な言葉で説明する。

そのことを人生の表題だと思っています。

相手に心の矢印を向けて、自分の話したいことを話すのではなく、相手が聞いてしっかりと受け止められる内容を話す。

私が話す時はそれを常に追い求めています。

 

ブログやYoutubeも、その練習の場です。

頭を使い続けます。

簡単に、上辺の薄い話を、しっかりと深く理解してもらうために、

これからも頑張っていきます!

 

ではまた!