今回は腎臓病についてお話します。
最初に、腎臓病、慢性腎臓病、腎機能不全、腎不全。
様々な用語が存在しますが、
あえて飼い主様に説明するときは厳密な言葉の区別はどうでもいいです。
獣医師同士が話すときにはしっかりすべきだと思いますが、
こんな名前の問題で脳のリソースを飼い主様が割く必要はありません。
腎臓病と言ったら、腎臓が悪い。
それが続く場合は慢性、
急に起きた場合は急性。
末期的な場合、腎不全。
それくらいでいいです。
やはり猫さんで多いですね、高齢の猫さんは重症度は別にして多くの子がお付き合いすることになります。
ワンちゃんの場合は、重篤なことになることが残念ながら多いですね・・・
原因もたくさんあります。
年齢的な変化、石、細菌感染、炎症、免疫反応、腫瘍、などなど。
これも、獣医師がきちんと判断して治療を行っていきます。
正確な判断には徹底した検査が必要になったりする場合もあり、
現状それが出来ない時に、大きく腎臓病と判断して治療することもあります。
検査をした、原因がわかった、動物は死んだ。
これでは駄目なんです。
それぞれひとつひとつの症状に合わせて、
どういったことをやるか、
どこまでやれるか、
その判断はとても難しいです。
ペットが腎臓病ですと言われて、
とてもショックを受けると思います。
これからどうなっちゃうの?
どれくらい生きられるの?
どんな治療が有るの?
治療費はどれくらいかかるの?
様々な疑問がぶわっと湧き出てしまうと思います。
誤解を恐れず言えば、
そんな状況で、
事細かに病気の説明をしても、
まったく頭に入ってこないと思います。
そういう時に、言葉を重ねてたくさんの話をしてしまうと、
のちのちのすれ違いの種を植えることになります。
まずは、落ち着いてください。
腎臓病には、
治療すれば腎臓機能が回復して、
注意は必要ですが、
安定した生活を送ることができる、
急性腎臓病と、
基本的には機能の回復が望めない、
これから腎臓病と一緒に生活することを考えなければいけない、
慢性腎臓病があります。
この二つの区別は、すぐには出来ません。
乱暴に言えば、
点滴などの治療を行って、
腎臓機能が回復するなら急性、
腎臓機能が回復しないなら慢性、
この区別は、最初にはわかりません。
予想はつきますが、実際には、
治療をしてみなければわからないのです。
治療の選択肢もいろいろとあります。
基本的には初期治療はなんと言っても点滴。
水を入れてあげて、腎臓への血液供給を回復させて、
体内の有害物質を薄めてあげることが中心となります。
点滴は皮下点滴と静脈点滴になります。
基本的には静脈点滴のほうが治療効果が高いです。
ただ、必ず入院での処置となります。
腎臓病はストレスの存在が病気を悪化させるので、
本人の性格を考慮に入れて、
どうった治療でやっていくのか戦略を立てていきます。
急性腎臓病を起こす代表的な病気は尿閉、
おしっこを出すルートが何らかの原因で詰まってしまって、
体外に尿を排出できなくなり、結果として腎臓病になります。
これは、おしっこを体外に出せるようにして、
点滴などで治療を行うと、
病気以前の状態に回復してくれることが多いです。
ただ、閉塞時間が長かったり、
腎臓が大きなダメージを追ってしまった場合は、
腎機能が回復できずに、慢性腎臓病になってしまうことがあります。
回復可能な急性腎臓病でも、時間経過や、場合によっては、
慢性腎臓病へとつながってしまうので、
おかしいなと思ったら、
ぜひ早い段階でかかりつけの動物病院を受診してください。
おしっこが出ない。
突然水を多く飲むようになった。
おしっこの量が急に増えた。
食欲が落ちた。
体重が減った。
元気がない。
いろいろな語りで症状が出ます。
様子を見ないで、
早く、しっかりと見てもらいましょう。
血液検査や尿検査、超音波検査など、
獣医師が判断して病気を探します!
残念ながら腎臓の機能が回復できない、
慢性腎臓病になってしまったら、
現状の腎臓で、生活の質を上げて暮らしていくことを目指します。
例えば食事を変えたり、
ドライフードをウェットフードに変えて摂取水分量を増やしたり、
処方食にして、腎臓への配慮した食事に変えたり、
お水を飲みやすくして上げたり、
色々と工夫をします。
もちろん投薬で腎臓機能を支えたり、
これ以上の進行を緩やかにしたり、
定期的な点滴を生活に組み入れたり、
たくさんの選択肢の中から、
その子にあった方法を一緒に探していくことになります。
性格や環境、飼い主様の状況など、
多くの要因が絡みますので、
出来ないことをやろうとせず、
できることの中から、無理のない生活の仕方を探しましょう。
腎臓病の評価は、尿検査、血液検査を始め、
食欲、体重、嘔吐回数、元気、排尿量など、
いろんなことを相対的に見て判断していきます。
体重の減少、筋肉量の低下、食欲低下、尿量の低下、
何か変化が起きているようなら、
かかりつけの動物病院へ相談してください。
たくさんの情報がネットに溢れています。
中にはこれで治る! みたいな広告もあります。
やってみて、害がない、金銭的な面も含めて、ものならば、
行ってみるのも良いかもしれませんが、
何よりもかかりつけの先生と意思疎通をとって、
一番いい方法を選んでください。
事情を知らない第三者がいきなりめちゃくちゃにしようとしてくることもあります。
そこに悪意がないかもしれません。
しかし、
日頃のかかりつけの先生ときちんと話し合うことで、
無駄な対立や、ペットをいたずらに振り回すことがないほうが、
お互いにとって良いことではないかなと思います。
極論を言えば、すべての生物は死にます。
私も死にます。
考えたくないですが、
私が飼っているペットも死にます。
病気で頭がいっぱいになって、悲しみながら暮らすよりも、
病気を受け入れて、
お互いに残された時間を大切に過ごしていただけることを、
私としては望んでいます。
もっと詳しく腎臓病のことを知りたい場合は、
こういった書籍を読むのもいいと思います。
大変わかりやすく丁寧に猫ちゃんの腎臓病について書かれています。
おすすめです。
ではまた!!