フィラリア

 

フィラリアです。

世の中の認知度も上がってきたこちらの病気は、

内部寄生虫。

寄生虫による病気です。

蚊によって広まる病気で、

蚊の体内で小さな寄生虫が育ち、

吸血の時に体内にその子虫が侵入してきます。

体内に入り込んだ寄生虫の子虫は血管の中を移動しながら成長します。

そして、目的地である心臓に移動していきます。

ある程度成長したフィラリア虫は、

その鋭い牙で心臓の肺動脈部分に噛み付いて寄生します。

その場所で栄養を得ながら成長し、

子虫を産みます。

血中にある子虫は、

蚊に血を吸われることで、

新たな生活の場を求めて広がっていきます。

体内の子虫も成長し、

心臓に寄生します。

こうしてフィラリア虫はどんどん大人になって心臓に集まります。

鋭い牙でかじりつかれた血管壁は、

炎症を起こして腫れてきます。

結果、血管の壁が盛り上がり、狭くなります。

血液の流れが邪魔されて心臓に負担がかかり、

ついには心不全を起こします。

これはベナケバと呼ばれ、

非常に強い心不全症状を起こして、場合によっては死に至ります。

また、血流などで成虫が流され、肺などに閉塞を起こして強い症状を起こすこともあります。

これは、成体駆虫時にも起こる可能性があり、

危険性が示唆されています。

 

治療は今お話した投薬によって虫を殺す成体駆虫、

外科的に血管からカテーテルを通して、

心臓に寄生している虫を直接回収する方法があります。

が、

直接虫体を回収する方法は、

最近は行える場所のほうが少ないと思います。

当院も道具がありません。

そして、駆虫薬による成体を殺す方法は、少しリスクがあります。

そこで、少し違う方法で虫を殺したりします。

わかりやすく言うと、

フィラリア虫が生きていくために必要な、

身体の中で飼っている細菌(共生)を抗生物質で殺すことによって、

緩やかにフィラリア虫を弱らせて殺す方法です。

同時に、血中の子虫も殺します。

こうすることで、これ以上フィラリア虫が増えることを防ぎながら、

寄生している成虫も弱らせきってから殺すので、ぼろぼろになって肺閉塞などのリスクが下がります。

30日間の抗生物質の投与、

ショックの予防をしてからの子虫の駆虫、

これらをうまく組み合わせて、

1年ぐらいの時間をかけて体内に寄生したフィラリア虫をやっつける方法です。

当院でもこの方法を取っています。

 

感染した後は、こういった複雑な方法やリスクのある方法での治療になりますが、

このフィラリア症。

予防をすることでほぼ100%発症を防ぐことが出来ます。

蚊から入ってきた子虫は非常に弱いので、

低用量の駆虫薬で殺すことが出来ます。

体内に入り込んだ子虫は2~4ヶ月で大きく成長していくので、

蚊が出てきたシーズンに、

毎月一回の投薬によって、

子虫を殺し続けて、

親虫が感染し症状を出すことを防ぐ。

それがフィラリア症の予防です。

内服や滴下タイプの外用薬など、

多くの選択肢で予防が可能です。

注意が必要なのは、

もしすでに感染しており、

血中に大量のミクロフィラリア、子虫がいる状態で投薬してしまうと、

大量の子虫が一気に死ぬことによって、

アナフィラキシーショックなどの危険なアレルギー症状を引き起こすことがあります。

それを防ぐために、

一年の最初の予防薬投与の前に、

身体の中にフィラリアがいないこと、子虫が大量に寄生していないことを検査します。

通年予防の場合は、この検査は必要ありません。

注射などの一年を通じた予防で、

感染の可能性が低い場合は検査の必要はないかもしれません。

 

フィラリア薬投与で最も大事なのは、

予防の最期です。

蚊によって移される可能性がない、

蚊を完全に見かけなくなってから、

その後に一度投与することが非常に大事です。

最期の投薬の後に蚊に刺され、翌年の春までに感染が成立してしまう可能性があり、

最期の一回の投薬を忘れてしまったせいで、

一年間の予防が無駄になってしまい、

フィラリアに感染してしまうのは悲しいです。

だったら、最期だけ飲ませればいいんじゃないか?

そんな事はありません、

子虫を殺す量の薬では、

親虫は死にません。

春から夏まで予防をせずに感染が成立し、

親虫になってしまった場合は、

フィラリア予防薬を飲んでも親虫は死なずに、

予防を終えた後に子虫を排出し、数を増やしてしまいます。

予防していたのに、

フィラリアにかかってしまう場合で多いのは、

適切な時期に適切な予防薬を投与できていない。

という可能性もありますので、気をつけましょう。

 

感染し、発症したら命に関わるフィラリア症。

予防によって防げる病気は、

是非予防によって防いであげてくださいね。

 

基本的にはワンちゃんに寄生する寄生虫ですが、

猫ちゃんにも寄生してしまうことがあります。

見つけづらく治しにくく厄介なので、

ネコちゃんも予防をしたほうが安心ではあります。

 

獣医師が予防を勧めるのは、

金のためじゃありません。

お金のためだったら、

予防させないで病気にしてから治療したほうが、

感謝されますし、

大金を手に入れられます。

予防薬程度のお金と比べられないほどです。

獣医師は、動物に病気になって欲しくないんです。

フィラリア予防は、全ての方がしっかりと行うと、

地域にいるフィラリア虫が減り、

うまくいけばなくすことも出来るかもしれません。

是非、フィラリア予防、蚊を見かけ始めたら、

かかりつけの動物病院でしっかりと相談して予防して下さいね。

よろしくおねがいします。

 

ではまた!!