吐き気。
辛いですよね。
病気は何でも辛いですが、
吐き気って特にしんどいです。
食事を摂る気にもならないし、
何なら吐いてしまうし。
吐くという行為は非常に辛いです。
また、胃から胃酸を含む物体が食道、口腔内に出てくるために、
炎症を引き起こします。
万が一気道に入ろうものなら、
肺にまで達してしまったら、
非常に恐ろしい誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。
動物が吐いている姿を見ていると、
本当に可愛そうですよね。
犬や猫は、人間に比べると吐くことが多い印象はありますが、
やっぱり辛そうですよね。
可哀そうですよね。
現在では、良い薬も多くなり、
吐き気の中枢から、吐き気ごと吐きを止めてくれるようなお薬も、
いつでも使えるようになっています。
胃酸を抑制するお薬、消化管運動をコントロールするお薬、そして中枢性の吐き気止め。
このあたりを上手く使って治療してあげると、
気持ち悪いって感覚も抑えて、動物も楽になって吐かなくなる。
比較的新しくて、大変有効で、便利なお薬です。
ところが、このお薬、便利すぎるせいで、
本来きちんと診断をつけてから使うべきなのに、
やや乱暴に使われてしまうことがあります。
気持ち悪い? ならコレ飲んで! みたいな感じで。
非常に強力な吐き気止めなので、
原因をきちんと解決しなければ、吐くことが止まらないような病気の吐きも、
一時的に止めてしまうのです。
代表的な例が、消化管内異物です。
食べてはいけないものを食べてしまい、
消化されること無く腸管で詰まってしまって起こる嘔吐、
そんなものまでも、吐き気を止めてしまいます。
もちろん、原因が解決していないので、
限界が来たらまた吐きます。
ところが、
ある程度吐き気がおさまってしまうために、
時間が経過してしまい、
異物の存在する場所の消化管が異常をきたしてしまって、
大きな問題になってしまう可能性があります。
もちろん、注意しなければいけないのは獣医師なのですが、
治療後に、吐き気は止まっているけど、
なんかおかしい、とか、
治療反応をお家で観察していただいて、
おかしいなと思ったらすぐに相談していただきたいのです。
誤解してほしくないのは、
この薬、本当にいい薬です。
そして、一般的な検査だけで、すべての病気を除外することは出来ません。
嘔吐症例にすべての検査をするのは、過剰医療です。
全身をよく見て、必要な検査を選んで病気を診ていくのですが、
残念なことに100%の精度でその判断をすることは困難です。
上手いことバランスをとって、
薬を使うことは少なくありません。
ただ、治療反応はしっかりと見て頂き、
おかしいなと思ったら、
再診の日まで待たずに、
一度話を聞いてもらうことが大事です。
そして、
より専門的な検査に移行したり、
思いもよらぬ別疾患を除外するような検査に移行することは、
誤診とかそういったものではありません。
動物は、人間と違って、自分の状態を正確に表現してくれません。
どうかそこは勘違いなさらないでください。
お願いいたします。
元気そうに見えて、恐ろしい病気だったり、
ぐったりしているように見えて、
本当はそこまで重い病気ではないこともあったり。
動物の性格など、多くの要素が絡み合って、
診断は行わなければいけません。
安易にインターネットなどで症例の相談に乗れない理由の一つです。
人間と違い、自分の症状を正しく伝えてくれない動物の、
インターネット診療は、
まだまだ慎重になるべきだと考えています。
今回は嘔吐についてのお話でしたが、
治療反応を見て、病気を判断して、
追加の検査をしていく。
動物医療では珍しいことではありません。
一般的に一週間くらいのお薬を出されて再診となることが多いと思いますが、
その手前でも、おかしいな? と思ったら聞いてください。
もちろん、正直一日薬飲んだだけじゃ変わらないよ! ッテ病気もありますが、
意思疎通と、状態の共有は大事です。
本当に、動物の診療は複雑で、だからこそやりがいがあります。
お家での主治医は飼い主様です。
変だなと思ったら気軽に相談しましょう!
ではまた!!